「公務員は退職金が多い」とよく言われますが、実際にいくらもらえるのでしょうか。この記事では、公務員の退職金の平均額や計算方法を、具体的な数字をもとにわかりやすく解説します。
民間企業との違いや、定年・自己都合による差、税金の扱いまでまとめて紹介します。
公務員の退職金とは?民間との違い
公務員の退職金は正式には退職手当と呼ばれ、国家公務員は「国家公務員退職手当法」、地方公務員は各自治体の「退職手当条例」によって支給額が定められています。
民間企業の退職金と最も大きく異なるのは、制度の有無が法律で保障されている点です。民間では退職金制度がない企業も珍しくありません。
厚生労働省「就労条件総合調査(2023年)」によると、退職金制度がある民間企業の割合は約74%。4社に1社は退職金なしという状況です。公務員は全員が対象となる点で非常に手厚い制度設計になっています。
退職金の平均額(勤続年数・退職事由別)
内閣官房「退職手当の支給状況(令和4年度)」のデータをもとに、国家公務員の退職金の目安を紹介します。
| 退職区分 | 平均勤続年数 | 平均退職手当額 |
|---|---|---|
| 定年退職 | 約37年 | 約2,105万円 |
| 早期退職(応募認定) | 約28年 | 約1,757万円 |
| 自己都合(20年以上) | 約23年 | 約813万円 |
| 自己都合(10〜20年未満) | 約14年 | 約272万円 |
| 自己都合(5〜10年未満) | 約7年 | 約84万円 |
※ 国家公務員(一般職)の参考値。地方公務員は自治体により異なりますが傾向は同様です。
定年まで勤め上げた場合の退職金は平均2,000万円超。老後の資金計画において非常に大きなアドバンテージとなります。
退職金の計算方法
公務員の退職金は以下の計算式で算出されます。
調整額 = 各月の調整月額の合計(在職期間に応じて加算)
俸給月額とは
基本給(俸給)の月額のことです。住居手当・通勤手当などの諸手当は含まれません。一般的な国家公務員が定年退職する際の俸給月額は40万〜50万円程度が多いです。
退職手当支給率(勤続年数別)
勤続年数と退職事由によって定められた倍率です。以下は国家公務員(行政職俸給表(一)適用者)の参考値です。
| 勤続年数 | 定年・早期退職 | 自己都合 |
|---|---|---|
| 5年 | 13.50倍 | 5.58倍 |
| 10年 | 19.50倍 | 12.54倍 |
| 15年 | 25.505倍 | 19.17倍 |
| 20年 | 31.50倍 | 25.775倍 |
| 25年 | 37.505倍 | 33.27倍 |
| 30年 | 43.50倍 | 40.21倍 |
| 35年(定年) | 49.59倍 | 49.59倍 |
計算例:勤続35年・俸給月額45万円で定年退職した場合
基本額 = 45万円 × 49.59 = 約2,232万円
これに調整額(概算200〜300万円程度)が加わるため、退職金総額は2,400〜2,500万円前後になるケースが多いです。
退職事由で金額が大きく変わる
退職金の金額はなぜ辞めたか(退職事由)によって大きく変わります。
| 退職事由 | 支給率の特徴 |
|---|---|
| 定年退職 | 最も高い支給率。満額支給。 |
| 早期退職(応募認定) | 定年に準じた率+若干の上乗せ加算あり。 |
| 勧奨退職 | 組織都合による退職。定年に近い扱い。 |
| 自己都合退職 | 定年より支給率が低い。勤続が短いほど差が大きい。 |
| 懲戒免職 | 原則として退職金は不支給。 |
自己都合退職は定年と比べて支給率が大幅に低くなります。特に勤続20年未満では差が顕著です。転職のタイミングを検討する際は、支給率の節目(10年・20年・25年など)を事前に確認しておきましょう。
国家公務員と地方公務員の違い
地方公務員の退職金は各自治体の条例によって定められています。国家公務員の制度に準じている自治体が多いですが、財政状況によって差が生じることもあります。
| 区分 | 定年退職の平均退職金 | 根拠 |
|---|---|---|
| 国家公務員(一般職) | 約2,105万円 | 国家公務員退職手当法 |
| 都道府県・政令市職員 | 約2,000〜2,200万円 | 各自治体の退職手当条例 |
| 市区町村職員 | 約1,800〜2,100万円 | 各自治体の退職手当条例 |
都市部の大きな自治体は国家公務員に近い水準になる傾向がありますが、財政が厳しい自治体では水準を引き下げているケースもあります。就職・転職の際は希望する自治体の条例を確認することをおすすめします。
退職金にかかる税金
退職金は「退職所得」として所得税・住民税の対象になりますが、非常に優遇された税制が適用されます。
勤続20年超:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)
計算例:勤続35年の場合
退職所得控除 = 800万円 + 70万円 × 15年 = 1,850万円
退職金2,400万円からこの控除を差し引いた550万円のさらに2分の1だけが課税対象となるため、実際の税負担は非常に軽くなります。
退職金は通常の給与所得と分離して課税されるため(分離課税)、給与との合算で税率が上がることもありません。長期勤続ほど控除額が増える仕組みになっており、定年まで勤め上げた場合の税負担は非常に小さくなります。
まとめ
- 定年退職なら平均2,000万円超を受け取れる
- 計算式は「俸給月額 × 支給率 + 調整額」
- 退職事由(定年・自己都合・懲戒)によって金額が大きく変わる
- 地方公務員は自治体の条例によって若干の差がある
- 退職所得控除の優遇税制で実際の税負担は非常に小さい
公務員の退職金は、生涯収入を考える上で非常に重要な要素です。現役のうちに仕組みを理解しておくことが、老後の資金計画にも役立ちます。